「フェライト」(Ferrite)は、酸化鉄を主成分にコバルトやニッケル、マンガンなどを混合焼結した磁性体(電子素材)です。
粉末の原料を1,000〜1,400℃の高温で焼き固めて製造されるため、セラミックの仲間にも加えられます。
材料の成分や配合具合によって多くの種類があり、粉を押し固めて作るのでいろいろな形にできます。
フェライトには2種類あります。
◆ハードフェライト
一度強い磁界が加わると、永久磁石になるフェライトです。
<用途> 小型モーター、スピーカー、ヘッドフォン、カセットテープ、フロッピーディスクなど。
◆ソフトフェライト
磁界(磁石)に触れると磁石になり、磁界を取り去ると元に戻り磁気が無くなるフェライトです。
<用途> テレビ、ビデオ、ゲーム機、パソコン、自動車、電子レンジ、掃除機、冷蔵庫など。
フェライトは、磁力が強く、電気抵抗も大きい(電気を通しにくい)のでいろいろな用途に使われています。
▼強い磁石になる磁性材料。
▼金属の磁性材料より電気を通しにくい。
▼酸化物の焼き物(磁器)なので、サビや薬品に強い。
▼複雑な形や大きな物、小さな物など、形を自由につくりやすい。
▼非常に硬い材料だが、割れやすいという短所もある 。
フェライトは昭和5年に、東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が発明しました。
武井博士がフェライトの研究を積み重ねているときに、ある日、測定器のスイッチを切り忘れるという失敗をしました。その失敗がすぐれたフェライトが生まれるきっかけになったのです。その後、加藤博士と武井博士はフェライトの磁力を高め、実用化を可能にしました。
フェライトの特許を加藤博士と武井博士からゆずり受けたのが、秋田県仁賀保町出身で、TDK株式会社創立者の齋藤憲三氏です。齋藤氏は「フェライト」の工業化に成功しました。そして日本はもちろん、世界にはばたく電子産業の基礎を作り上げました。「フェライト」は、エレクトロニクス産業には欠かすことのできない素材となっていきました。
フェライトを語るうえで、この4人の存在は欠かせません。
齋藤憲三 氏
昭和初期の秋田に産業を興すため尽力した、初代TDK社長・齋藤憲三氏。
常に故郷・秋田のことを考え、そしてさまざまなことを試み、夢を信じ、挫折しながらも、故郷の可能性を信じていました。そして、生涯に2つの事業を成し遂げ、歴史に自らの名前をきざみ込んだのです。
1つは「フェライト生産の工業化」、もうひとつは「国会議員として科学技術庁の初代政務次官になったこと」。齋藤氏を動かしたのは故郷への愛だったそうです。
山ア貞一 氏
TDKの二代目の社長となる山ア貞一氏は、東京工業大学に在学中、フェライトを発明した加藤与五郎博士と武井武教授(当時)と出会います。その後、東京電気化学工業株式会社(現在のTDK)に入社。フェライトの工業化に力を注ぎました。秋田県名誉県民にもなっています。
加藤与五郎 博士
東京高等工業学校電気化学科の教授に任命されてから、コロイド科学研究で理学博士の学位を受けました。
その後、東京高等工業学校は、東京工業大学へと昇格。 ここで15年以上にわたって研究を進め、約300 の発明特許を得ましたが、その中には、武井
武博士とともに研究を進めたフェライトもありました。フェライトの発明は全世界に大きな影響を与えました。
武井 武 博士
昭和7年、理学博士の学位を受け、東京工業大学教授、慶応義塾大学教授等を歴任。フェライトの発明や開発・応用電気化学の分野において卓越した功績をあげ、学術の進歩および産業の発展に貢献されました。
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フェライトは、平成26年に公益社団法人発明協会「戦後日本のイノベーション100選」に選定されました。
⇒フェライトの紹介